20xx年。

果てしない核戦争と、それに伴う深刻な環境破壊により、空はどろりとしたモルタルのような積雲に覆われ、海はカビの生えかけたパンのように変色し、地球はもう人間が住めない程に汚染されていた

富裕層や権力者たちは、汚染された地上を見捨て、はるか上空、衛星軌道上のコロニーへと逃れて「上流層」として君臨していた。

一方、地上に取り残された数十億の人々は、有毒なスモッグと酸の雨が降る「汚染された地球」で、その日を生き延びるのがやっとの悲惨な生活を強いられていた。

そんな中、上流層は長らく凍結されていた「火星開拓プロジェクト」の再開を突如として宣言する。

それはかつて人類が火星へ送った労働用アンドロイドたちが自我に目覚め、反乱を起こしたことで完全に放棄された計画である。

かつての地球のような新天地を求める上流層は、安全な軌道上から火星を再奪還するため、地上の汚染区域に住むプロレタリアートたちを「開拓者」として輝かしいプロパガンダで騙し、火星に送る計画を立案した。

だが、彼らに与えられたのは帰還用の燃料すら積まれていない鉄の棺桶だった。

プロレタリアートたちは、暴走した防衛兵器の弾薬を消耗させ、火星の奥地に辿り着く為の霧払い――使い捨ての駒として最前線へ送り込まれたのだ。

真実を知らぬまま、英雄になれると信じた名もなきプロレタリアートたちを乗せた降下船が、いま無慈悲な赤い大地へと突入しようとしている――。

火星開拓録

- The Red Truth -